AM6:00の水平線





てくてくてくてく



某日、快晴。
まだ明るくない朝の空気はとっても澄んでいて、体がぴりっとします。
息をはくと、グルグル巻きにしたマフラーの隙間から真っ白い息が出ました。
とっても寒いです。
隣であくびをかみ殺している宍戸もさっきからもう何度目だか分からないくらい「さみー」を連発しています。


「やべーな、今日。朝練死ぬわ。マジさみー。」
(あ、また言った)



てくてくてくてく
ぴゅーぴゅーぴゅー


今日も元気に北風が吹いてます。
寒いです。
ポケットの中の手は凍えてどうにかなってしまいそうです。
私はまだ手袋を買ってないのですが隣の宍戸はどうなのでしょうか。多分持ってない気がします。


「・・・・・」
「・・・・・」
「宍戸、手袋とかしてんの?」
「あー、してない」
「寒くない?」
「寒いに決まってんだろーが」
「ね、寒いよね」






てくてくてくてく
てくてくてくてく
ぴゅーぴゅー
びゅーびゅーびゅー

今日も元気に北風は強く吹いてます。
すごく寒いです。

「宍戸、」
「あ、何」
「・・・あの、ね」

「なに」

「あの、その」
「なんだよ」
「・・・えと」
「?」
「・・・・・・・・・・・やっぱいい」
「何だよ!気になるじゃねーか!」
「・・・・・いいの」
「・・・・・いいのかよ」
「うん、いい、です」
「ふーん」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・」
「今日、マジさみーな」
「・・そ、だね」






てくてくてくてく
ぴゅーぴゅーぴゅーぴゅーぴゅーぴゅーぴゅーぴゅー

今日も元気に北風は強く吹いてます。
隣には宍戸がいます。
朝練前の早い時間、周りには誰もいません。




「・・・寒い、よね」
「おー、マジさみーな」










「・・・・・手、とか、つないだり、とか、しても、いい?」






「・・・・別に、いいけど」













てくてくてくてく
てくてくてくてく
てくてくてくてく
ぴゅーぴゅー
ぴゅーぴゅーぴゅーぴゅー

今日も元気に北風は強く吹いてます。
すっごく強く吹いてます。
隣には宍戸がいます。
さっきよりなんだかあったかい気がします。
つながってるのは手だけなのに、不思議です。


「・・・なんか照れるね」
「・・・・・」
「えへへ」
「・・・さみ」
「でも、さっきよりあったかくなった。」
「・・・・・あっそ。」






「宍戸はすっごい手あったかいね」
「・・・の手が冷たすぎなんじゃねーの」
「体温高いんだね、子供みたい」
「は!?」






今年の冬は、手袋は買わなくていいやと思いました。